アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
――こんな時、お友だちは何時くらいを目安に帰るのだろう?

飛香は悩んだが、全くわからない。
とりあえず自分の中で目安を九時にした。今からおおよそ一時間後。

そう決めたことにはっきりとした理由はないが、その時間を超えてはいけないと、自分の中の何かが信号を出しているような気がしたからだ。

ふいに洸が部屋のライトを消して、カーテンを開け放った。

――え!?
ガラス越しの夜景を見た飛香は、次の瞬間感動で心が震えた。
――なんて綺麗なの!

灯りを消して部屋が闇に沈んだからだろうか?

それともワインを飲んで少し酔ったからだろうか?

ついさっき見た夜景とは、全く違って見える。

「なんとなく落ち着くでしょ。僕はこの部屋にいるとほとんどこのライトで過ごしてるんだ」

視線を部屋に戻せば、花のような形をした美しいスタンドライトが目に留まる。赤みを帯びた灯りは、ジッと見つめても目が疲れない優しい灯。

部屋のところどころには穏やかなオレンジ色の間接照明が点いている。

時々洸は邸に帰らずこの部屋に帰るというが、それも当然だろうと思った。

この空間で、彼の心は十分に癒されるに違いない。


――私もこの部屋にまた来たい……。

飛香はそんな想いを、そっと心の中に隠した。
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