きみと1番目の恋

あまりいい上司ではなかっただろう。
部下の小さな恋心にも気付けない
頼りない上司だっただろう。

だけど、受け取ってくれていた。
菜穂ちゃんは。至らない私の
今までをきちんと受け取ってくれていた。

郁人「届いてたね、ちゃんと。」

ずっと黙って手を握って
帰り道を歩いていた郁人くんは
前を向いたままそう言った。

郁人「いい部下だね。
さすが、翼さんの部下だ。」

翼「ありがとう。」

立ち止まった郁人くんが
もう片方の手と手を合わせるから
私たちは向かい合う形になった。
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