僕ら死神の仕事
一章
今日も地上に降りて適当にふらふらする。

「ふわぁぁ…」

昨日の残業で疲れ切った体は目を瞑ればすぐにパタッといきそうなくらいだった。

小さい体は重ダルくてすぐにでも潰れそうだ。

春らしい暖かい風がふわふわとした僕の髪をさらに掻き乱していく。

「なんだっけ?春は…」

「あけぼのだよ。眠いなら寝ればよかっただろ。しかもなんで俺まで」

隣にいるやつはイサヨ。

僕の同僚。

顔面偏差値が異常に高い。

…それ以外に説明ってないんだよね。

あ、身長が高い。

仕事については万能。

そんな感じ?

いつも一つだけ魂を連れていてイサヨの隣でふよふよとしている。

唯一僕が関わっている同僚だ。

「いいじゃん。だって子供だよー?襲われたら大変。」

「子供の格好して魂の回収しているゼロが言うと説得力がないな。」

「あーあ。上も乱暴だよね〜死神なんて人間の迷信でしかないのにさー」

「実際にいる俺らがそんなこと言ってたら元も子もないだろ…」

「人間の走馬灯とかもう見るの飽きた。そろそろ転職探したーい。」

「人間じゃない俺らにそんなのあると思う?」

そう。僕は人間じゃない。

人間の魂を回収する死神。

死を直面した時の走馬灯をみて生かすか殺すか決める立場。

馬鹿馬鹿しい仕事だった。

「いつかこの仕事なんて起訴されておけばいいよね。といっても人間界とは違うから無理か。」

僕は鎌を縮小させて足にいつもの様につける。

この世の中は便利だ。

自分の身長なんかより全然大きい鎌を腰や足に隠せる位の大きさまで小さくしたり大きくしたり出来るんだから。

「さて。僕はあっちに戻るかな。」

「仕事ないから休もうって言ったの誰だ。」

「さぁ?僕は地界の声を聞きたくないからここに来ただけだしね。」

ワープホールのような歪みに入って地界に行く。

ただひたすらに何も無い崖のそこのような場所。

彼岸花だけがこの世界の色だろう。

色鮮やかな赤は妖艶に輝き、見る人を魅了するだろう。

それに似合わない叫び声。

いや…悲鳴?それとも救いを求める声?

『助けて』『辛い』『ここから出して』『元に戻して』

…最悪。

「いつにも増して酷いなぁ…まぁ変わらないよね。ここは。」

「…そうだな。」

雪の結晶のようなものがふわふわと浮き上がる。

それに触れれば暖かい家族の走馬灯の1部が見える。

「あーあ。僕にもこんな世界があればいいのに。」
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