黒縁眼鏡と銀縁眼鏡
それから私は、なぜか佑真の機嫌をうかがうようになった。

絶対に怒らせてはダメ、本能がそう告げる。
夢では毎晩、あの男の人が私に逃げろという。

夢のように穏やかだった生活は、あっという間に瓦解した。

そして私は、つい云ってしまったのだ。

――佑真と私が恋人同士って嘘だよね、って。

「なんでそんなこと思うの?」

冷たい佑真の視線に、背中を気持ち悪い汗が滑り落ちる。

「だって、佑真にキスされたって全然嬉しくないどころか……嫌、っていうか」

心臓がばくばくと激しく鼓動する。
なに聞いてるんだ私、って叱り飛ばしたい心境。
しかし、後悔したってしょうがない。

「どこまで思い出した?」

「え、あ、全然思い出せてはないけど」

顎を掴まれ、無理矢理上を向かせられ、視線をあわされた。
レンズの向こうの瞳が、怯える私に加虐的に笑う。

「せっかくぜーんぶ忘れちゃってたから、優しくしてあげたのに。
もうお終いだね」

「あの、どういう……?」
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