黒縁眼鏡と銀縁眼鏡
「でも、この眼鏡と一緒にいたい」

気が付いたら、眼鏡をぎゅっと抱きしめてぽろぽろ泣いてた。
はぁーっ、再び大きなため息をついた北嶋さんの手が、私のあたまを撫でる。

「……仕方ない。
これをそばに置くことで知重が落ち着くんだったら」

「うん。
ありがとう」

眼鏡を握りしめた私は今度こそ、深い眠りに落ちていった。


その後。
私は北嶋さん――佑真とふたり、ここで生活してた。

北嶋さん、って呼んでたんだけど、他人行儀だからいままでみたいに佑真って呼んで欲しい、そう云われた。
恋人だっていわれても実感のない私にとって初めは抵抗あったけど、しばらく呼んでるうちに慣れた。

私の世界は佑真が全部だ。

テレビもラジオもないここでは、佑真が教えてくれることが私の知識の全てで、なんの疑いもせずに素直にそれを信じた。
佑真が私の世界の中心で、それが当たり前だとすら思っていた。
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