黒縁眼鏡と銀縁眼鏡
たまに、もしかして私の知らない間に、世界に私と佑真だけのふたりになっちゃってるんじゃないか、って思ってしまうことがある。

まあ、それならそれでかまわない、そう思うほどここでの生活は私にとって安らげるものだった。

……ふたつのことを除けば。

ひとつは、佑真に口づけされるたびに背筋が逆立つこと。
なぜ恋人同士なはずなのに、嫌悪感を抱くのか。
いまだにわからない。

もうひとつは、あの銀縁眼鏡。

佑真は私が、あの眼鏡にいい思い出がないといっていたが、そうとは思えなくて。
片時も眼鏡を手放そうとしない私に佑真もとうとう根負けし、チェーンをつけて首から下げられるようにしてくれた。

それほど大事な、もの。

眼鏡にふれていると忘れているとても大事なことを思い出せそうな気がするんだけど、いつも思い出せない。
結局酷い頭痛を起こし、佑真を心配させる羽目になる。

 
キンコン。

ここで暮らし始めて二月ほどたったその日、ひとり留守番してたらチャイムが鳴った。
びくり、恐怖で身体が震える。
佑真は買い出しにいってて、いない。
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