一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
コンコン…!!
「「!」」
いつもより強く扉がノックされる音がした。
同時に動きが止まる私と椿。
しかし、即座に動揺をかき消した私は、素早く扉に向かって駆け出した。
ガチャン…ッ!!
勢いよくそのドアを開けると、目の前に見えたのは髪がわずかに乱れた彼の姿。
「……!」
声も出せずに彼を見上げていると、少し息の上がっている彼は、はぁはぁ、と呼吸をしながら私を見つめた。
「ごめん…!遅く、なって……!」
ふわり、と微笑んだ樹さん。
その表情を見た瞬間。緊張の糸がプツリ、と切れる。
ぽろっ…!
「…!美香…?」
無意識に頬を伝った涙。
一雫落ちて、はっ!とする。
何を泣いているんだ、私は。
来ないと思っていた彼が来てくれたからか?それとも、私を優先した彼に複雑な気持ちを抱いているのか?私との約束を選ばせてしまったことに罪悪感を覚えたのか?
きっと、その全てが正解だ。
いろんな感情が一気に押し寄せて、溢れ出る。