一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
「…美香に何を言った。」
聞いたこともないような樹さんの低く鋭い声。部屋の中にいる椿は、わずかに目を細めて答えた。
「別に。合意のもとで賭けをしていただけさ。」
「賭け…?」
眉を寄せた樹さんに、椿は目を細める。
「本当にここに来るとはね。社長令嬢との見合いを棒に振るなんて思わなかったよ。」
「…!」
ちらり、と私を見た樹さん。自分が今までどういう状況に置かれていたのかを私が知っていると悟ったようだ。
すると彼は、小さく呼吸をして言い放った。
「惚れてる女の子がいるのに、見合いなんか大人しく受けるわけないだろ。」
(…!)
それは、迷いのない響きだった。
もやもやと考え込んでいたことが全て吹き飛ぶ。
と、それを聞いた椿が考え込むように黙り込み、やがて何かを言いかけようとした
その時だった。
「…樹。なぜここにいる。」
「「「!」」」
低く、威圧感のある声がした。部屋の中にいた三人が、はっ!として声のした方を見る。
すると、樹さんの後ろからコツコツと姿を現したのは、質のいいダークジャケットを羽織った一人の男性。
桐生さんよりもはるかに歳上だろうが若々しい外見で、立ち振る舞いと声には威厳と品がある。そして、その切れ長の目元にはどこか既視感があった。
すると、彼を見た椿が目を見開いて声を上げる。
「社長…!」
(え…っ?!!)