一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

こっそり、隣を盗み見る。


『だったら、本気で俺を好きになればいい。あんたを惚れさせてあげる。』


かつての彼のセリフが頭をよぎった。

そうか。この男は私を落とそうとしてるんだ。

どこまで本気かは分からないけど、彼にとっては単なるゲーム感覚なのかもしれない。

私が、恋人のフリなんて無理、なんて言ったから、面白半分に本気にさせようとしてるだけなのだろう。

あの時。スキャンダルに巻き込まれたのが私じゃなかったら、この人は他の女の人に同じようなことをしてたのかな。

ふと、そんなことを考えて、無意識に息が詰まった。


(どうして、私がモヤモヤしないといけないの。振り回されちゃダメだ。)


「…どーした?」


「えっ?」


信号で止まった彼が、ちらり、と私を見た。突然、話しかけられ、どきりとする。


「いや。般若みたいな顔でこっちを睨んでるから。」


「般若?!!」


感情が、モロに顔に出てしまっていたらしい。

“これ以上、私の感情をかき乱さないで。私は、優しくされたらコロッと落ちちゃう単純な女なんだから!”、なんて言えたら楽なのに。


「樹さんって、読めない人だなぁって思って。」


「ふふ、何それ。俺は分かりやすいと思うけど。」


< 52 / 186 >

この作品をシェア

pagetop