一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
すっ、と私の手を取った彼は、ゆっくりと手を引いて歩き出した。そして、きゅっ、と指を絡め、静かに口を開く。
「美香。これから一人の時に記者に絡まれたら、何も答えないで逃げて。危ないから。」
(…!)
「…すみま、せん…」
確かに、あのまま樹さんが来なくて、私の言動に記者が怒り出していたら、手に負えなかった。
二人は、そのまま無言で歩く。
ガチャ。
車の助手席に乗り込むと、二人っきりの空間に沈黙が流れた。
彼はなかなかエンジンをかけない。
(…?)
そんな彼を不思議に思い、ふいっ、と隣を向いた、その時だった。
すっ、と、彼の手が私に伸びる。
「…美香。」
「!」
「ありがと。」
まるで、しゅんとした犬を励ますような手つき。ぽんぽん、と頭を撫でる手が優しい。
目を見開く私。その温もりは一瞬のことで、すぐに、すっ、と離れてエンジンをかけた彼は、それ以上何も言わなかった。
まさか、落ち込んでると思われた?
彼が放った言葉を受けて、私が謝ったから?
私を気遣うような仕草に、つい胸が鳴る。
褒められるためにやった訳ではないが、こうやってお礼を言われると無意識に口元が緩む。
彼はいつもクールで澄ました顔をしていて、感情が表に出なくて、何を考えているのか分からない。
だけど、口数が少ない彼から紡がれる言葉だからこそ、そこに嘘がないのだと信じられる。
…ずるいなぁ。この、無自覚女殺し…。