ワケあり同士による華麗なる政略結婚
車のルームミラー越しに睨まれ、怖くなり俯く。
迷惑をかけてしまったのは確かだ。
でも遊びに行ったのではなく、忘れものを届けに行っただけ。
それも彼に頼まれてだ。
それだけでこんなに冷たい態度を取られるなんておかしいと感じてしまう。
こうしてまともに会話を交わしたのは初めての筈なのに、まるで随分と昔から恨まれているような、、そんな感覚。
モヤモヤとした気持ちのままマンションの地下駐車場に着き、車から降りた。
「送って頂き、ありがとうございます。」
「いいえ。では、仕事がありますのでこれで失礼します。」
深々と頭を下げると、淡々とした言葉とエンジン音が聞こえ顔を上げる頃には彼女の運転する車は遥か遠くにあった。