ワケあり同士による華麗なる政略結婚
こうなると大概の男性は汚いものを見るような表情を浮かべ、困惑する。
案の定強く握られていた手が離れ〝あぁやっぱり〟と意識が薄れる中ボンヤリしていると急に呼吸が楽になった。
うっすら目を開けると、何処からか入手した紙袋が口に当てられていた。
『落ち着け。こんな公衆の面前で倒れるな。お前は仮にも俺の妻だろ。 』
めんどくさそうな表情は浮かべるものの、いつのにか彼から抱き寄せられていてその逞しい身体から温もりを感じた。
それは女性にはない硬さと力強さがあって、父や兄達とはまた少し違うものだ。
トントンと背中を規則正しく叩かれると、その心地のよい一定のリズムに気持ちが落ち着きを取り戻し呼吸が楽になった。
『少しは落ち着いたか?、、かなり注目を浴びてる。取り敢えずここを出るぞ。』
言葉を発することはできなかったが、素直に頷いて立ち上がろうとするとそのまま身体を強く引かれてエスコートするように彼が歩き出した。