ワケあり同士による華麗なる政略結婚
『アンタが住んでる部屋はそのまま契約しておけ。費用は俺が出す。何かあった時にお互い逃げ場は必要だ。」
彼の表情をチラリと伺うと無表情でどこか他人事のように淡々と話を進める彼を見て、急に不安になった。
『まずアンタのその男性恐怖症を治す事が必要だ。荒治療になるかもしれないが、それなりの覚悟はしておけ。ぶっ倒れるくらいじゃ帰さないからな。』
そう言いながら彼がこちらに手を伸ばしてくる気配を感じて身体が震える。
ここで逃げればこれまでと同じだ。
そこで勢いよく自らその大きな手を掴んだ。
情けない事に手は震え、全身血の気が引いて氷のように冷えていくのが自分でも分かる。
それでも手を離さずに強く握りしめる。
「絶対に治して見せますっ、、!だからまずは誠也さんの事を、、教えてください。男性恐怖症を治すのはまず貴方を知ってからだと思っていま、、す。だって私たちは夫婦ですから、、。」
勇気を振り絞って伝えた言葉に、冷たい表情をしていた彼は驚いた顔をした後で可笑しそうに笑った。
『、、あんた健気な上に意外と大胆だな。それに自分の事をあんまり分かってないようだ。無意識なんだろうが、、俺も一応男だからそんな表情されるとホテルにでも連れ込みたくなる。』
「連れっ、、!?」
恐ろしい事を言われ、途端に怖くなり手を引こうとするがビクともしない。
その力の強さに、あの時のトラウマが蘇ってきて呼吸が乱れ始めてしまう。