ワケあり同士による華麗なる政略結婚
そう言い残して、足早に浴室を去って行く彼。
1人になって、うっすら赤い腕を見つめながら自分の身に起こった事態を把握しようと頭をフル回転させた。
まず、、泥棒では?!思っていた相手は、ここに越してきてから一度も顔を合わせていなかったこの家の主人であった事。
そして驚きすぎたとはいえ自分の不注意でスープが腕に掛かり、火傷してしまった事。
それを見た彼が途端に血相を変え、体を抱き上げ浴室に連れて行き火傷の腕を冷やしてくれた事。
それはいつも冷静で少し冷たい印象のあった彼の姿とはかけ離れていて、焦ったような表情や心配そうな表情など見たことのないものばかりだった。
何より自分のスーツが濡れているのにも関わらず、必死に冷やし続けてくれた。
男性にあんなに触れられたのに、いつもの冷や汗や過呼吸は起こらなくて体全身が熱を持つという新しい症状が起こった。