ワケあり同士による華麗なる政略結婚
今までの自分ならその誘いに乗っただろうが、頭にあいつの顔がかすめて今はそういう気分にならない。
『いや、気分じゃない。、、要件はそれだけか?話が終わったら仕事に戻れ。』
突き放した言い方をして横目で睨めば、途端に腕から離れていった。
「、、失礼致しました。では午後から会議がこざいますのでその時にまたお呼びに参ります。」
そう言って頭を下げたのちに、副社長室から足早に去っていった。
そんな秘書の後ろ姿を見て、深いため息を吐いてまた資料に視線を落とした。
あまりにも執念してくるようなら秘書を変える事も考えなければいけない。
本当に女は面倒くさい生きものだ。
これまでは結婚後も誘われるままに女を抱いてきた。
それも30を過ぎれば性欲も少し落ち着き、特定の女しか抱かなくなった。
ただ相手に何かしら特別な感情はなく、性欲を満たすだけの相手。
それ以上のモノは何も求めていない。
結婚相手にもそうだった。
不自由のない生活をさせ、子種をやって跡取りを作れば夫としての役割は終わりだ。
もし結婚相手と身体の相性がいいなら週に何度かは相手をしてやってもいい。
だが、それに不満があるのなら離婚してもいいという考え方だった。
結婚をそのくらいにしか思っていなかった。
ましてや相手に何かしらの感情を抱くなんて思っても見なかった。