大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「わかった…もういい。…奏は健さんじゃないもんね。もう、奏の代わりに他の誰かを代わりにもしないから心配する必要なくなるでしょう。これで私に会う理由はなくなったし、今まで通りの生活を楽しんでください…今まで、あ、り、が、と、う。さよなら、奏のバーカ」
鞄を掴み、帰る気で立ち上がった私。
「えっ、待って待って…どうしてそうなるの」
「バカだね」
優希さんは椅子から立ち上がりオロオロして、臣さんは、椅子に座ったまま、呆れた声でどちらに言ったのかわからないセリフを吐いて笑ってる。
その、臣さんのなんでもわかってる顔って表情が更にムカつく。
「どうせ、バカですよ」
苦笑する臣さんに言わずにいられなかった。
「優希さん、今日はお先に失礼します」
「えっ、待って…奏さん、菜生行っちゃたわよ」
ガヤガヤする店の中でも優希さんの声は聞こえたけど、奏がなんて言ってたかなんて聞こえなかった。
無我夢中で歩いた。
駅地下の階段途中、ヒールのかかとがひっかかり転びそうになる。
後ろから、男の人の手が助けてくれた。
奏が追いかけ来てくれた…なんて思って振り返ったら奏じゃなかったことにガッカリしている。
「大丈夫?」
目の前にいる人は、片思いしていた健さんなのに!