大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「健さん⁈」

「久しぶり…足、捻ってない?」

「あ、はい。大丈夫です」

「気をつけてね」

目尻にシワを作り、私が大好きだった笑顔を向けてくれる。

この笑顔が好きだった…

それなのに、イケメンの顔をくしゃくしゃにしてニコッと笑う奏の笑顔が一番好きだと思ってしまう。

「えっと、ありがとうございます。健さんはどうしてここに?」

智奈美との新居は、駅から離れた住宅街だったはず…

「帰る途中で、菜生ちゃん見つけたからさ…何度か呼んだんだけど聞こえてなかったようで、ちょっと話したくて追いかけてきたんだ」

「…そうだったんですね。気がつかなくてすみません」

「立ち話もなんだし、どこか入る?」

そう言われて、前の私なら喜んでいただろう。

でも今はもう…

「いえ、そこで十分です」

「そう?なら、そこに座ろうか!」

人通りはまばらだからか、自販機横にあるベンチは空いていたので、そこに人1人分の間を取って座った。

「結婚式に出席してくれてありがとう。ちなも喜んでいたよ」

「私も、智奈美の結婚式に出席できて嬉しかったです。ウエディングドレス姿を見て感動しましたもん」

「うん、それは俺も感極まって泣いた」

「健さんがですか?」

「うん…やっとちなを独占できるからね」
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