大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
人が一生懸命人生初のデートプランをスマホで検索しながらいろいろ考えているのに、菜生は突然首に抱きついてくる。
「……誘ってる?」
「違うから…バカ」
表情が隠れて読めないが、耳を真っ赤にさせていて、それがなんだか可愛いて…
「違うって言われてもな…俺、スイッチ入った。抱いていい?」
「嫌って言っても抱くんでしょ!」
「その気にさせてから」
最近、彼女に『抱いていいか』とたずねれば、真っ赤な顔をしてツンケンな態度で文句を言う。
それがなんだか可愛く見えて、毎回、『抱いていいか』と聞いてしまう。
キスを仕掛け、その気になるまで待つのだが…その合間に「…ご飯は?」なんて無粋なわかりきった言葉を毎回言う。
「後で、食べる。今は菜生を抱きたい…」
そう言うと、彼女は小動物のように目をクリクリとさせ恥じらって可愛く頷くのだ。
ツンケンした後にくる、この可愛い態度はクセになり、我を忘れて抱いてしまう。
抱いた後は体だけじゃなく、心も俺だけのものにならないだろうかと心の奥が痛むが、この曖昧な関係でも彼女の側に居られるならと、今は無理強いはせずに彼女の心が俺に向くのを待つつもりでいる。