大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
デートの当日、俺は外出先から帰社しなくてもいい日を選んで待ち合わせていた。
1番の理由は誰にも、邪魔されたくないからだが…そうする事で菜生の退社時間に合わせて待ち合わせする事が出来るからだった。
駅前の待ち合わせ場所でよく使われる噴水広場で
待っていると、見知らぬ女が声をかけてきた。
声をかけられるのはよくあるが、待ち合わせだとわかっていて声をかけられるのは初めてだった。
その女と出かける気はないし、聞き流していたら俺は菜生を見つけて手を上げた。そして彼女が来たことを女に伝えて菜生の元へ。
「向こうの彼女と出かけてもいいんだよ」
浮かれた足取りで向かえば、可愛くない事を言う。
そんな気がないから、菜生の側にいるのに伝わらないから、「菜生といる方がいい」そう言って指を絡めて手を繋いだ。
振り向くまで待つ気ではいるが、伝わらない思いに歯がゆくもなる。
そんな胸中、見知らぬ男が敵視した目を向けて、すごい勢いで近寄って来た。
誰だよ?
菜生を奪われたくなくて手をぎゅっと握った。
彼女には、俺以外の関係のある男なんていないとわかっているが、そう思ってしまうのは曖昧な関係だからだろうか?