大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
菜生は、そんな2人を適当にあしらったのに、臣が俺を見て意地の悪い顔をするから、余計にムカついていく。
「ウカウカしてて、横からトンビに油揚げを攫われるってことわざのようにならなきゃいいけど」
わかってるよ…そんな事。でも…今は側にいて男として見てもらう方法しかないんだ。
「私は、当分彼氏なんていりません」
「まだ、吹っ切れてないのか?女々しい女」
こんなに側にいても、菜生の心には健がまだいると言われた気がして、つい、思ってもいない事を言ってしまい怒らせてしまう。
「女々しくて悪い?あんたみたいに、次々と取っ替え引っ替えするほど、私は軽くない」
「はぁっ?健の代わりに俺に抱かれてるくせに…」
売り言葉に買い言葉だった!
その瞬間、バシッと菜生が俺の頬を叩いていた。
菜生が何か言っているが、怒らせて嫌われてしまったというショックが大きく焦るばかりで、彼女の文句に反応もできないまま、帰ってしまう彼女を追いかける事もできない。
「えっ、待って…奏さん、菜生行っちゃたわよ」
わかってるから静かにしてくれ…
菜生は、今、なんて言っていた?
一言、一言、思い出していく。