大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

しばらくすると、頭上から寝息が聞こえ奏が寝むりについたらしく、そこでやっと彼の寝顔を間近にしてみる事ができる。

起こさないように顔だけを動かして、しばらく見つめているのは、奏が寝た後の最近の私の日課。

嫌味なぐらい、整った顔立ちを崩しもしないで、目を閉じて寝ている。

この顔が、気の緩んで表情になり、口を開けヨダレを口の端から垂らして寝ている姿でも見せてくれれば、私も、気を張らずに側にいられる気がする。

ボサボサの髪も、スッピンも、襟が伸びたルームウエア姿でも平気だったし、酔って絡んでグダグダな情け無い姿も見せてたきたのに、今は、ボサボサの髪なんてもってのほかだし、まぁスッピンは寝る時だけだし、お酒の量も加減を覚えたし、ルームウエアも新調したそれは、気にいったのを見つけたからと自分に理由をつけ自分の分と男物を勢いで買ってしまった。

だけど、家に帰るとなんとなくクローゼットの中に隠してしまった。偶然、それを見つけられ、嬉しそうにするから、つい、「ペアで売ってたから、着たかったら着ていいよ」なんて言ってしまう。

素直になるのは難しくて、気を張ってしまうから、正直疲れ始めている。

毎日、来なくていいのにと思いながら、来ないと悲しくて、奏に抱きしめられて寝るのが当たり前になる今、一人寝は寂しい。
< 135 / 211 >

この作品をシェア

pagetop