大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
だから、こうして一緒に寝る時は、彼が寝るのを待って顔を見つめながら頬を手のひらでなぞり、自分からそっと触れるだけのキスをして寂しかった日を埋めている。
「…すきよ」
奏が起きている時になんて、好きだと言えないし自分からキスなんてできない。
寝ているはずの奏はにこやかに微笑むと、寝れない子供をあやすように私の背をポンポンポンと三回優しくうつのだ。
言葉はないけど、まるで、おれも…とか、すきだ…と言われている気がして嬉しくなる。
寝ているんだよね…
奏の顔の前で手を振り、起きているか確認するけど、寝息を立てている。
もしこれで起きてたら、恥ずかしくて穴があったら隠れてしまいたぐらい、私だけの秘密。
健さんがすきだったのに、今は奏が好き。
しばらく恋なんてできないって思う失恋をしてから、ほんの数ヶ月しか経っていないのに、私の心は、奏でいっぱい。
女にだらしなくて、俺様で、実る事のない片思いをする私をバカにしてて大嫌いな男だったのに、傷ついてる私を気にかけて、気がついたらいつも側にいてくれた。
あの日も、酔ってやけになってる私を止める為に私を抱いてくれたのかもしれない。