大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

アーァ、ダメだ。
そんなの想像もしたくない。

こいつとなんて、指一本も触らせたくない。

つい、石黒の足を蹴っていた。

「痛いっす。何するんですか?」

「別に」

「あの女はやめておけ」

「先輩に指図される筋合いないっすよ。邪魔しないでください」

言うや否、戻って行く石黒に何も言い返せない自分と菜生の曖昧な関係。

俺の女でもない菜生に、どうこう言う資格なんてないのはわかってるのに、あいつの側に俺以外の男が寄り添う姿なんて見たくない。

これはもう、自覚するしかない!

俺は菜生が好きなんだと…

だが、あんな始まりで彼女を抱いて、今までのサイテーな俺を知っている菜生に、どう接していけばいいのかもわからない。

今だに、失恋の傷から癒えていないだろう彼女の心を掴むには、今までの俺ではダメだと言う事はわかってるんだ。

だけど、今までの俺は女性に対してサイテー過ぎた。

過去を悔やんでも仕方ないのはわかっているが、自分が嫌になる。

せめて、菜生に出会う前に気がついていたら…なんて思ってしまう。

バカだよな…菜生に出会ったから気がついたのに。

思い悩んでいるうちに、無意識にタバコに火をつけていた。
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