Ignition
「えー、秘密ですか。つまんない。っていうか服分からないのに敢えてそこを攻める意味が分からないですもん。理由話してくださいよ、協力してあげますから」

「……何だお前、いつもはそっけないくせに今日はやけに親切だな」

「新井さんこそ今日はやけに頑なじゃないですか。新井さんの良いところはオープンなところなのに。飲みに行っても娘自慢してるのに、今更そうやって隠されるとかえって気になります」

 桐谷は腕を解いて、テーブルに前のめりになった。華奢なネックレスが白い胸元で揺れた。
目を見ているつもりでも、新井の意識はその下へ向かう。目のやり場に困ってつい、窓の外に顔を向けた。

「美香が……、高校は寮に入ると言ってる」
「え、なんで?」

「美香に訊いても何も言わないが、これといって何かあったわけじゃない。……いや違う、多分俺が悪い」

「どっちなのよ、はっきりしてください」

 桐谷は不満そうな声を上げるが、新井としても何が原因かすらわからず、突っ込んで訊かれたところで理由を話しようがないから困った。
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