Ignition
「お父さん」美香が呼び止めた。
「うん?」

「やっぱり私の進路ゆるしてくれないの」
 新井はゆっくりと振り返った。

「理由を聞かせてはくれないのか? 俺も頭ごなしに美香のやりたいことを否定したりはしないよ。ただ、勉強ならどこにいても出来る。もし、その学校でしかできない何かがあるっていうのならそれをきちんと説明して欲しい。東京にだって学校はいくらでもあるだろう」

 今度は美香が押し黙った。

「ごめんな、色々察しが悪くて。とにかく飯にしよう、もう遅いから」

 新井はそのまま部屋を出て、一階のダイニングに下りた。片手鍋に火をかけながら、桐谷にメッセージを打った。

『悪い、日曜美香を連れ出すのは無理かもしれない。色々話を聞いてくれたのに申し訳ない』
返事はすぐに返ってきた。

『そうですか。でも大丈夫ですよ。頑張りましょうね』

 この的外れな返答は、話を聞いているのかいないのか。もう一度メッセージを打とうとしたところで着替えを済ませた美香が下りてきて、新井はスマートフォンをポケットにしまった。
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