Ignition
「私も買っちゃいました。見ますか」

新井が遠慮する間もなく中身を引っ張り出して、膝の上に広げだす。下着ごときでいちいち照れる年齢ではない。それでも、どう反応するのが上司と部下の間柄に相応しいのかは、さすがに想像がつかなかった。

「私、白のレースにしました。こういうの好きじゃありません?」
「……それは、まあ」

タグがちらつく。値段よりもまずサイズに目がいく。……桐谷はどうやら着やせするタイプのようだ。

「十代で着たら清純って感じですけど、大人が着ると清楚な雰囲気の中にさりげなく色気が出せるところがいいんです。最近私、いつもこんな感じにしてるんですよね」

 聞いた瞬間、緩やかな曲線を描く胸元に視線が吸い寄せられて困った。

 恋愛対象外の存在だから平然と見せるのか。それとも桐谷にとって、下着は洋服と同じ扱いなのか。

こんな調子ならば、若い男は簡単に勘違いしてしまうだろう。関係を持つことに慣れた女だと思われて、遊ばれるか、男の腰が引けてしまうか。

根の真面目さを知っているだけに、桐谷が心配になった。
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