Ignition
■6

 乗った時間がまずかったのか、帰りの高速ではすっかり渋滞にはまってしまった。予定外の早起きでさすがに疲れ果てたのか、美香は後部座席でクッションに寄りかかり、すうすう寝息を立てている。

 きっと、ひとりで買い物に行かせるよりは良かったはずだ。新井はバックミラー越しに娘の姿を見ながら目を細めた。

進路の話はまだ出来ていない。それでも、美香が今日満足できたのなら、とりあえず良しとしなくてはならない。

途中、お互いに機嫌を損ねたが、それを『思ったことが言い合えた』と見ることも出来る。きっかけにはなったかもしれない。新井は出来るだけ前向きに捉えようとした。

「新井さん、眠くないの?」
 助手席の桐谷が欠伸を噛み殺しながら言った。

「そりゃあ眠いけど」
 桐谷はペーパードライバーの上に酒を飲んでいるし、代わりに運転手がいないのだからどうにもならない。
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