Ignition
「私の良さって何ですか」
「何に対しても真面目なところかな」

「……言われたこと、ないです」
 桐谷は目を丸くして新井に向き直った。

「仕事でも同僚が困ってれば何だかんだでフォローに入るし、今日にしてもさ。俺の相談を聞いた以上何かしなくちゃいけないと思ったから、休み潰してここ来てくれたわけだろう。相手を思って行動してるのはわかるよ。それがなくて、ああいった言い方なら俺もキレてる」

「えー、お昼ご飯のとき、新井さん半ギレだったじゃないですか」
 桐谷がようやく笑った。

「悪かったって。あれは俺も反省した。行動から考えれば桐谷は優しい。だが、いかんせん口が悪い」

「褒められてるのか貶されてるのか、よくわかりません。はっきりしてください、私中途半端なの嫌いなんです」

 言葉はいつもどおりでも、その口調に棘はない。些細な変化が、二人のあいだに心地の良い間を連れてきた。

 返事を待つでもなく、桐谷は助手席の窓から東京の夜景を眺めている。ちらりと盗み見たその横顔に、普段は見せることのない桐谷の素顔が滲んでいる。
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