Ignition
「お母さんのことが許せなかった。お父さんはどんなときでも優しかったのに、どうして他の男のところに行ったんだろうって。でも、お父さんに対しても、どうして引き止めてくれなかったんだろうってずっと思ってた」

 分かっていたとはいえ、言葉で聞くとずしりと重い。

「今朝だって、最悪だと思った。どうしてよりによって、私の誕生日に女の人なんて連れてくるんだろうって。栞那さんのほうが美人だけど、ちょっとお母さんに似てるなって思ったし」
「勝手なことしてすまなかった」

「なんだか今日のお父さん、謝ってばっかり」
 しゃくりあげながら美香が笑う。

「でも私、もう怒ってないよ。話してみたら栞那さん面白いし、本当にいい人で、お父さんのことちゃんと考えてくれてて。もしお父さんに彼女ができるなら、栞那さんみたいな人がいいなって。

……自分がそうやって思えたことに、ちょっとびっくりしたんだ。三年の間に私も少しは大人になったみたいだよ」
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