Ignition
「あ! そういえば」

 美香は突然会話を遮り、何を思いついたのかドアを開けて車を飛び降りた。そのまま後ろに回りこみ、ハッチバックを開く。

新井が何事かと振り返ると、美香は紙袋のひとつを開き「やっぱり」と、今までとは一転、明るく声を弾ませた。

「美香?」
「栞那さん、スカート持って帰るの忘れてる。買い物をした時に、ひとつだけ袋が一緒にされちゃったのがあって。……あれ、なんでこんなところに栞那さんの買った下着が」

 美香は泣いて紅潮してしまった顔のまま、面白い玩具を見つけた子供のように、目をキラキラとさせている。新井は急に嫌な予感に襲われて、正面に向き直った。

「ねえお父さん」
「忘れ物なら会社に持っていくから、そのまま置いといてくれ」

「え、会社に女の人の下着持っていくの?」
「……袋に入っていれば見えやしないだろう」
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