Ignition
■7
五〇二号室のベルを押すと、メイクをすっかり落とした桐谷が顔を覗かせた。風呂上りなのか、さっきまで綺麗に巻かれていた髪は柔らかくほどけ、半渇きのまま胸元に落ちている。
「なんで新井さんなの。美香ちゃんかと思ったのに」
「悪かったな、俺で。……これ」
新井が紙袋を前に出すと、扉の隙間から手を出して、桐谷はそれをさっと中に引っ張り込んだ。
「ありがとうございました。それじゃ――」
「桐谷。少し、話がしたいんだけどいいか」
「嫌に決まってるじゃないですか」
不服そうに睨みつけてくる顔は、同じ表情でもいつもよりも幼い。
「そうだよな」
「そういう意味じゃなくて……。だって、メイクもしてないし。ああ、でももういいや。おあいこですから上がってください」
桐谷は諦めたように、めいっぱい扉を大きく開けて、新井を部屋に招き入れた。
五〇二号室のベルを押すと、メイクをすっかり落とした桐谷が顔を覗かせた。風呂上りなのか、さっきまで綺麗に巻かれていた髪は柔らかくほどけ、半渇きのまま胸元に落ちている。
「なんで新井さんなの。美香ちゃんかと思ったのに」
「悪かったな、俺で。……これ」
新井が紙袋を前に出すと、扉の隙間から手を出して、桐谷はそれをさっと中に引っ張り込んだ。
「ありがとうございました。それじゃ――」
「桐谷。少し、話がしたいんだけどいいか」
「嫌に決まってるじゃないですか」
不服そうに睨みつけてくる顔は、同じ表情でもいつもよりも幼い。
「そうだよな」
「そういう意味じゃなくて……。だって、メイクもしてないし。ああ、でももういいや。おあいこですから上がってください」
桐谷は諦めたように、めいっぱい扉を大きく開けて、新井を部屋に招き入れた。