Ignition
「そう言ってもらえると。コスト的には相当厳しいと思うから、機能の実装方法をちょっと相談したいなって。ごめんね、せっかく仕事が終わったところにこんな話持ち込んで」苦笑いすると、

「ぜーんぜん。まきちゃんの頼みならいくらでも。ねー、神長」優月はキッチンに顔だけ向けて、家の主に同意を求める。

「え? ああ」

 冷蔵庫から酒のつまみになりそうなものを見繕う長身の青年は、優月と同じ会社に勤めるシステムエンジニア、神長廉だ。

 今日坂巻は、受注に関する裁量権を持っている神長に、可否を判断してもらおうとここに来た。相談内容は、新井の洋服代として集まった二十万円で作れるアプリケーションソフトについて、である。

 神長は地魚の刺身とチーズをテーブルに置き、二人に「どうぞ」と勧めた。

 優月の目がそれに向いた途端に、手からすっとドキュメントを抜き取って、優月の隣に座る。坂巻とは向かい合わせになり、いかにも商談らしい配置だ。
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