王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
「メイ……」


何の音もしなくなった牢の中で、何度も親友の名前を呼んで、呟いた。


メイは侍女だ。だけどそれだけの仲じゃなかった。

メイは私が強いと思っているから、本当は違うんだって知らない。

ワガママだって言うけど、ワガママを選択出来るのはメイのおかげだって事も知らない。


メイがいてくれるから、どんな時も迷わずにいられる。

メイがいてくれるから、どんな時も冷静でいられる。

メイがいてくれるから、どんな時も伯爵令嬢として凛と振る舞うことが出来る。


メイがいてくれるから、一人が怖くなくなったのに。


メイがいなくなるから、わたしはまたひとりになる。



「メイ……」


今何を考えているんだろう。

どんな顔をしているんだろう。

どれだけ苦しんできたんだろう。

どれだけ悲しんできたんだろう。

私はそれに気付かずに、ずっと。


「ごめんね、メイ」


オリヴィアはずっとメイの名前を呼んで謝り続けた。

そうして再び目が覚めるけど、何も変わらない景色が広がっている。

石畳の牢獄に、かがり火と、上に続く階段。

そしてこつこつと響く靴音が二つ。


「おはよう、オリヴィア嬢。起きた?」


耳にこびりつくような嫌な声は弟王リアムのものだ。そしてその後ろにはやはりフードを被ったままのメイがいた。

オリヴィアは眉間に皺を寄せながら「またあなたですか」と呟いた。


「こんなところに毎回来るなんて暇なんですね?」

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