花鳥風月


だけど、不思議なことに、同時に悲しみも消し去ってしまうのである。


例えば、恋人が私の話に耳を傾けてくれなくて満たされていなくても、その後に彼は優しく温かい愛で私を包み込んでくれることで、全てが帳消しにされてしまうのだ。


それだけで私は悲しさなんて吹き飛んでしまう。


一瞬にして、彼のことを許してしまえるのだ。


だけど、忘れてはいけないものもある。


悲しみ。


矛盾しているのに、私はそれが必要だ。


悲しみがなければ、あなたの事は愛せないのだ。


愛しかないのなら、私は彼を嫌いになることはない。


彼を思って泣くこともない。


彼のために心を惑わされることもない。


一見幸せな未来しかない。


だけど、それで本当に彼を愛していると言えるのだろうか。


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