花鳥風月


雨の降る放課後。


今日は久しぶりに恋人に会う予定だったのに、あいにくの天気だ。


「ごめん、お待たせ。」


彼のクラスのホームルームが終わったらしい。


「いいよ、行こう。」


雨だから行く場所は限られてしまう。


だけど、私達はそんな天気の中でも散歩をするのが好きなのだ。


「どこに行く?」


「雨の時しか綺麗に見えない場所。」


「本当に好きだよな、そこ。

いいよ。」


笑っているけれど、本当は私よりも彼の方が好きなくらいの場所だ。


ささやかな幸せ。


この時間が、続けばいいのに。


降り止まない雨。


しとしとと地上に降り注ぐ雨。


足元に幾つもの美しい幾何学模様が創り出される。


「雨、止まないね。」


「いつかは止むんだろ。」


「そうだよね。」


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