花鳥風月
信じられるだろうか。
止まない雨はない、と。
黙って彼のあとを付いていく。
前を行く背中を見ながら思う。
私は、この瞬間を永遠に覚えているだろうか。
彼と歩く、雨道を。
「……もしも、また晴れたらどこに行こうか。」
「俺は、星が綺麗に見える場所に行きたい。」
思わず笑ってしまう。
「そう言うと思った。
……いいよね、星。
今度、流れ星か満月を見たい。」
「俺も。」
忘れたくないなあ。
この瞬間。
会話のひと言でも、忘れたくない。
彼の仕草、表情の一つも忘れたくない。
ずっと、覚えていたい。
雨音も、雨のつくる幾何学模様も、照れると少し左に傾く彼の背中も、雨の質感も、何もかも。
「……忘れたくないね。」
「……俺らのうちのどっちかでも覚えていれば、忘れない。」