宿命~フェイト~
亮の店には相変わらず寄っている。


店に入った途端に亮が夕刊を読んだか?って聞いた。

私は朝刊しか見ない。

「見てないよー!どうかしたの?」


「翔ちゃんって高田だよな?多分そうだと思うんだけど、捕まったみたいだよ!」


???


「えっ?何で?」
血の気が引いた。


「昨日、ひき逃げして今朝出頭したって!」


何それ?昨日ってうちの店に来てるじゃん……帰り?

どっどうしようっっ!


飲んでいる気分ではない。一緒に行ったはるなには悪いけど早々に帰った。
次の日、翔ちゃんが取引してる保険やさんの大橋さんに電話してみる事にした。

私も一応契約があるから、お客さん。けっこうさばさばした人だから仲良くなっていた。


やっぱり大橋さんが担当して事件後の手続きなんかで飛び回っていた。


だけど翔ちゃんはすでに逮捕されていて会えないし、警察もまだ事情を話してくれないらしい。


何か解ったら連絡くれるように頼んだ。

状況がわかんなくて心配で仕方なかった。


新聞では被害者は重症とだけあった。


被害者の人には悪いけど翔ちゃんの心配ばかりしていた。

警察にいる翔ちゃんの姿を想像して、刑事ドラマのように取り調べをうけているのか、可哀想。
なんて思っていた。悪いことしたのは翔ちゃんなんだけど……


次の日のお昼頃大橋さんから電話がきた。


被害者は足の指を骨折した程度だったらしい。

ただ逃げたのがまずかった。


翔ちゃんは飲酒運転の上の事故だったので咄嗟に逃げてしまったのだろう。


その頃ちょうど飲酒運転の規制が厳しくなったばかりで何十万の罰金が課せられた。そんな事も考えてしまったんだろう。

実際警察もみせしめの為に厳しかったらしい。


あの日はそんなに酔ってはいなかったはずだけど、お酒が抜けるまで待って朝方出頭したらしい。

翔ちゃんはどんなときでも機転がきく。それが災いしたかも…


その日の行動を全て言わされて、その裏付けをとるためにママも警察に呼ばれた。


お願い!ママ。翔ちゃんに都合悪い事は言わないであげて!祈るしか出来ない私。


結果、翔ちゃんの話と、ママの話に食い違いがあるとかで取り調べは長引いてしまった。


ママのばかーっ!店にとっても翔ちゃんはいいお客さんなのに!


後から聞いたら翔ちゃんはママに賭けたらしい。


他に行った何件かの店の名前を出すと迷惑かかる人が増えてしまう。

ブラックレインでずっと飲んでいた事にして欲しかったみたい。


ママはうまくやってくれる人だと信じていたのにな…

後日そう言ってた。自分が悪い訳だから責めはしなかったけど……


だけど私もママはその辺うまくやれる人のはず、と思っていたから、何か……

ママ、面倒だったのかな?なんて悪い方に考えてしまう。

最近ギクシャクしてるし…

大橋さんの話だと何ヵ月か出てこれないだろうって。

全く、翔ちゃんのバカー!ドジー!私の保証人いなくなっちゃうじゃん!って

あーーっ!


マジで間に合わない……
保証人がいなければ私、やるって決めても出来ないじゃん。


参っちゃったなー


やる方向で傾きかけていたのに振り出しに戻ってしまった。

迷っていた。

どうしよう!時間がない。

翔ちゃんの店をやる事にしていたら、とっくにママの話は断っていただろう。


翔ちゃんがいない今は、店を引き継ぐにも保証人を見つけなくてはならない。


どうしたらいいのか……


この時はまだ経営者にはなりたくないと思っていた。
悩みながらも毎日ずるずると過ごしてしまっていた。

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