宿命~フェイト~
今まで生きてきた中で、何度も何度も岐路に立たされた。
そのつど自分で考え、決断してきた。
人の言われた通りにして、後悔したくなかった。
自分で決めた事は自分の責任なので、たとえ後悔しても納得出来るし、あきらめもつく。
悩んだときまず考える事は、その時何が一番嫌なのか。
この方法はチイママになる時に迷っていた私に同僚のはるなが教えてくれた。
あの時ママは入院する事になって、私がママかチイママになって店を続けてくれないなら、閉めるしかなくなってしまうと言った。
今と同じような状況。
私は迷った。
その時の彼氏は大反対。
そんな責任が重い仕事はお前には無理だ。
俺の反対を押し切って引き受けるなら別れると言われた。
その時の同僚みんなに集まってもらって相談した時、迷っている私にはるなが言ったんだ。
『樹理ちゃんが一番嫌なのは何?彼氏と別れる事?他の店で働く事?ブラックレインがなくなる事?』
『ブラックレインがなくなる事』
即答した。
『じゃあやるしかないんじゃない?』
答えはでていた。
私はみんなにこんな私でもついてきてくれるかどうか聞いた上で決意したんだ。
ママが戻るまでチイママとして店を守る事を。
そして彼氏と別れる事を。
あの時の決意が間違っていたのかどうか今はまだわからない。
今現在置かれている状況で一番嫌なのは、………
今まで頑張ってきた〝ブラックレイン〟が無くなる事!
ママは〝辞める〟と既に決断している。
そうなると
〝別の店に務める〟
〝夜の仕事を辞めて転職〟
〝ブラックレインを買う〟
この三択。
という事は答えはでてしまう。
やるしかないのかな?
当然一番に亮に相談した。
亮は別に驚きもせず
「俺は無責任に何も言えないな。樹理の人生だからよく考えて決めな!
でも俺はおまえなら大丈夫だと思うけどね!」
そう言ってくれた。
嬉しかった。やりたいわけではなかったけど、やっぱりお前には無理だと言われるより数倍嬉しい。
次の日翔ちゃんが飲みに来たので、店が終わったあと私の幼なじみであり、翔ちゃんのお客さんでもある英樹の店〝ゼウス〟に飲みに行った。
翔ちゃんには何でも話せる。
商売が成功していて余裕があるせいか、どんな事も
〝何、そんなちっちゃい事、どうにでもなるって!〟てな感じで動じないから、何となく安心してしまう。頼れる存在だ。
私は本音を話した。
私はお金が無いこと。
ママは分割でいいって言ってること。
前々からクラブから引き抜きの話があること。
別の店でまた一から、新人から働くのは気が進まないこと。
ブランクがある為に昼間の就職は難しく、やっぱりこの仕事を続けたいこと。
借金スタートで運転資金もほぼない状態では不安なこと。など
マスターの英樹と二人で話を聞いてくれた。
英樹は
「樹理ちゃんやればいいじゃん。俺、応援も協力もするから!」
と言ってくれた。
翔ちゃんは
「樹理頑張れる?頑張れるなら、借金スタートが嫌なら、俺が店だしてあげようか?」
なんて言ってる。
翔ちゃんは周りの社長連中が店をだして愛人にやらせてるのを見ていて仲間に入りたかったのだろう。
ブラックレイン以外で店をやるなんて考えてもいなかった。
翔ちゃんはあれ以来亮との事を反対している。
「やめたらー?もう」なんて言う。
多分私が騙されていると思っているから。
そのくせ自分も妻子もちなのに
「寂しいから別れられないなら俺が責任とってやってもいいよ!」
なんて言う。
男なんてみんな下心の塊だ。
だけど、それは速攻
『却下します』で終わる。
私と翔ちゃんはその辺あっさりしている。
だからそんな話がでて、断っても友達でいられる。
たまに、『愛人にしてあげてもいいよ』なんて冗談言ってるけど…
私ってつくづくおバカ。
同じ不倫なら亮と比べたら翔ちゃんの方がいいに決まってる。
見た目だって悪くない。背は高いし。野球選手の清原みたいな感じ。
奥さんとはうまくいってないみたいで毎日飲み歩いてる。
お金もあるし、時間も自由がきく。
貧乏でしかもなかなか逢えない亮より幸せなのかも。
不倫は不倫だけど……さ。
だけどおバカな私は頭ではそっちがいいと解っていても心が頑固で……
というわけで翔ちゃんの店は却下。
だけどもしやることになったら保証人になってくれる約束をしてくれた。
私にはそんな事を頼める人が他にいなかったから有り難い。
二人に話したことでほぼ気持ちは固まりだした。
翔ちゃんのBMWで送ってもらい、その日は亮の店には寄らずに帰った。
後から亮から電話がきたけど私が行かなかった事には怒りもしなかった。
やっぱり倦怠期なのかな?
その後何人かに相談したけど、みんな答えは同じ。
引き継ぐって事はママの後ろ盾もあるだろうし、ママが樹理ちゃんに悪いようにするわけないんだから、大丈夫じゃない?
頑張ってみれば?って言って貰えた。
だけどその頃からママと私の間に何やら不穏な空気が流れ出したんだ。
ママのお客さんで私を可愛がってくれてるお客さんの中でも仲良しのじじ。
40代からすでにじじと呼ばれていたらしく皆がじじって呼んでた。
歯ブラシ一本胸ポケットに入れて、全国競輪ツアーにでかけたり、朝までバーでカクテル飲んでたり、ジャンパー姿でふらっとティファニーに入って買物しちゃったり、おちゃめな不良じじだ。
粋なじじを私は大好きだった。
じじは私が店を引き継ぐ事になりそうだと言ったらびっくりしてた。
ママはまだ店を閉める事をじじに話してなかったから。そりゃ驚くよね。
でも、やるなら頑張れって言ってくれた。
だけどこの事がきっかけで私とママはギクシャクしてしまう事になる。
私にとって店を経営するなんて、しかも借金スタートなんて、人生の一大事だ。
突然の事だから特にそうだ。
不安もいっぱいあったからいろんな人に相談した。
もし、そうなったら来てくれるかどうかも心配だったし。
たくさんの人が難しい顔をしたら、又はそんな噂を聞いたら辞めておこうかな?なんて思ってた。
なんせやりたいと思っていたわけじゃないから何の準備もない。
不安で一杯だよ。
そんな私の気持ちは理解されなかった。
あの時のママには……。
ママは店を閉める事を、まだ数人にしか話していなかったらしく、私が相談した人達や、その人達に聞いた人に知られた事が嫌だったらしい。
ママの師匠(ママが尊敬しているママさん)にじじが話してしまったらしくそのママに怒られたそうだ。
私もママに怒られてしまった。
話す相手を考えろって。
でも……
私は腑に落ちなかった。
だってママの話では閉店は決まっている事。しかも来月。
早いも遅いもなく、私はすぐにでも決断しなければならないわけで……
じじに話したこと、間違っていたとは思わなかった。
「じじは、確かにママのお客さんだけど、今は私は私で別の付き合いがあるし……私だって今回の話には不安もあるしたくさんの人に相談したいです。
話す相手を間違えたとは思いません。」
強めに言ってしまった。
ブラックレインは指名制ではないのでお客さんの取り合いはない。
店が潤えばOK!自動的にみんなが潤う。そんな店。ママが入院してる間、チィママとしてお客様と連絡取り合っていたのは私。だからじじはママのお客さんであり、私のお客さんでもあるから、別に問題ないはずだった。
お世話になった大事な存在の人なら私に打診する前にママから話すべきだと思う。
実際そのママの師匠が何も知らなかった事をじじも私も驚いたんだから。
違うかもしれないけど、本当は来月閉店する事も、
300万で買う人がいるっていう話もまだ未定で、私は試されたのかも……
そう思った私は、はっきりと自分は間違っていないと言ってしまった。
ママに対して少しの不信感が生まれた。
ママは反論はしなかったけどその日から何となく私に冷たくなった。
そのつど自分で考え、決断してきた。
人の言われた通りにして、後悔したくなかった。
自分で決めた事は自分の責任なので、たとえ後悔しても納得出来るし、あきらめもつく。
悩んだときまず考える事は、その時何が一番嫌なのか。
この方法はチイママになる時に迷っていた私に同僚のはるなが教えてくれた。
あの時ママは入院する事になって、私がママかチイママになって店を続けてくれないなら、閉めるしかなくなってしまうと言った。
今と同じような状況。
私は迷った。
その時の彼氏は大反対。
そんな責任が重い仕事はお前には無理だ。
俺の反対を押し切って引き受けるなら別れると言われた。
その時の同僚みんなに集まってもらって相談した時、迷っている私にはるなが言ったんだ。
『樹理ちゃんが一番嫌なのは何?彼氏と別れる事?他の店で働く事?ブラックレインがなくなる事?』
『ブラックレインがなくなる事』
即答した。
『じゃあやるしかないんじゃない?』
答えはでていた。
私はみんなにこんな私でもついてきてくれるかどうか聞いた上で決意したんだ。
ママが戻るまでチイママとして店を守る事を。
そして彼氏と別れる事を。
あの時の決意が間違っていたのかどうか今はまだわからない。
今現在置かれている状況で一番嫌なのは、………
今まで頑張ってきた〝ブラックレイン〟が無くなる事!
ママは〝辞める〟と既に決断している。
そうなると
〝別の店に務める〟
〝夜の仕事を辞めて転職〟
〝ブラックレインを買う〟
この三択。
という事は答えはでてしまう。
やるしかないのかな?
当然一番に亮に相談した。
亮は別に驚きもせず
「俺は無責任に何も言えないな。樹理の人生だからよく考えて決めな!
でも俺はおまえなら大丈夫だと思うけどね!」
そう言ってくれた。
嬉しかった。やりたいわけではなかったけど、やっぱりお前には無理だと言われるより数倍嬉しい。
次の日翔ちゃんが飲みに来たので、店が終わったあと私の幼なじみであり、翔ちゃんのお客さんでもある英樹の店〝ゼウス〟に飲みに行った。
翔ちゃんには何でも話せる。
商売が成功していて余裕があるせいか、どんな事も
〝何、そんなちっちゃい事、どうにでもなるって!〟てな感じで動じないから、何となく安心してしまう。頼れる存在だ。
私は本音を話した。
私はお金が無いこと。
ママは分割でいいって言ってること。
前々からクラブから引き抜きの話があること。
別の店でまた一から、新人から働くのは気が進まないこと。
ブランクがある為に昼間の就職は難しく、やっぱりこの仕事を続けたいこと。
借金スタートで運転資金もほぼない状態では不安なこと。など
マスターの英樹と二人で話を聞いてくれた。
英樹は
「樹理ちゃんやればいいじゃん。俺、応援も協力もするから!」
と言ってくれた。
翔ちゃんは
「樹理頑張れる?頑張れるなら、借金スタートが嫌なら、俺が店だしてあげようか?」
なんて言ってる。
翔ちゃんは周りの社長連中が店をだして愛人にやらせてるのを見ていて仲間に入りたかったのだろう。
ブラックレイン以外で店をやるなんて考えてもいなかった。
翔ちゃんはあれ以来亮との事を反対している。
「やめたらー?もう」なんて言う。
多分私が騙されていると思っているから。
そのくせ自分も妻子もちなのに
「寂しいから別れられないなら俺が責任とってやってもいいよ!」
なんて言う。
男なんてみんな下心の塊だ。
だけど、それは速攻
『却下します』で終わる。
私と翔ちゃんはその辺あっさりしている。
だからそんな話がでて、断っても友達でいられる。
たまに、『愛人にしてあげてもいいよ』なんて冗談言ってるけど…
私ってつくづくおバカ。
同じ不倫なら亮と比べたら翔ちゃんの方がいいに決まってる。
見た目だって悪くない。背は高いし。野球選手の清原みたいな感じ。
奥さんとはうまくいってないみたいで毎日飲み歩いてる。
お金もあるし、時間も自由がきく。
貧乏でしかもなかなか逢えない亮より幸せなのかも。
不倫は不倫だけど……さ。
だけどおバカな私は頭ではそっちがいいと解っていても心が頑固で……
というわけで翔ちゃんの店は却下。
だけどもしやることになったら保証人になってくれる約束をしてくれた。
私にはそんな事を頼める人が他にいなかったから有り難い。
二人に話したことでほぼ気持ちは固まりだした。
翔ちゃんのBMWで送ってもらい、その日は亮の店には寄らずに帰った。
後から亮から電話がきたけど私が行かなかった事には怒りもしなかった。
やっぱり倦怠期なのかな?
その後何人かに相談したけど、みんな答えは同じ。
引き継ぐって事はママの後ろ盾もあるだろうし、ママが樹理ちゃんに悪いようにするわけないんだから、大丈夫じゃない?
頑張ってみれば?って言って貰えた。
だけどその頃からママと私の間に何やら不穏な空気が流れ出したんだ。
ママのお客さんで私を可愛がってくれてるお客さんの中でも仲良しのじじ。
40代からすでにじじと呼ばれていたらしく皆がじじって呼んでた。
歯ブラシ一本胸ポケットに入れて、全国競輪ツアーにでかけたり、朝までバーでカクテル飲んでたり、ジャンパー姿でふらっとティファニーに入って買物しちゃったり、おちゃめな不良じじだ。
粋なじじを私は大好きだった。
じじは私が店を引き継ぐ事になりそうだと言ったらびっくりしてた。
ママはまだ店を閉める事をじじに話してなかったから。そりゃ驚くよね。
でも、やるなら頑張れって言ってくれた。
だけどこの事がきっかけで私とママはギクシャクしてしまう事になる。
私にとって店を経営するなんて、しかも借金スタートなんて、人生の一大事だ。
突然の事だから特にそうだ。
不安もいっぱいあったからいろんな人に相談した。
もし、そうなったら来てくれるかどうかも心配だったし。
たくさんの人が難しい顔をしたら、又はそんな噂を聞いたら辞めておこうかな?なんて思ってた。
なんせやりたいと思っていたわけじゃないから何の準備もない。
不安で一杯だよ。
そんな私の気持ちは理解されなかった。
あの時のママには……。
ママは店を閉める事を、まだ数人にしか話していなかったらしく、私が相談した人達や、その人達に聞いた人に知られた事が嫌だったらしい。
ママの師匠(ママが尊敬しているママさん)にじじが話してしまったらしくそのママに怒られたそうだ。
私もママに怒られてしまった。
話す相手を考えろって。
でも……
私は腑に落ちなかった。
だってママの話では閉店は決まっている事。しかも来月。
早いも遅いもなく、私はすぐにでも決断しなければならないわけで……
じじに話したこと、間違っていたとは思わなかった。
「じじは、確かにママのお客さんだけど、今は私は私で別の付き合いがあるし……私だって今回の話には不安もあるしたくさんの人に相談したいです。
話す相手を間違えたとは思いません。」
強めに言ってしまった。
ブラックレインは指名制ではないのでお客さんの取り合いはない。
店が潤えばOK!自動的にみんなが潤う。そんな店。ママが入院してる間、チィママとしてお客様と連絡取り合っていたのは私。だからじじはママのお客さんであり、私のお客さんでもあるから、別に問題ないはずだった。
お世話になった大事な存在の人なら私に打診する前にママから話すべきだと思う。
実際そのママの師匠が何も知らなかった事をじじも私も驚いたんだから。
違うかもしれないけど、本当は来月閉店する事も、
300万で買う人がいるっていう話もまだ未定で、私は試されたのかも……
そう思った私は、はっきりと自分は間違っていないと言ってしまった。
ママに対して少しの不信感が生まれた。
ママは反論はしなかったけどその日から何となく私に冷たくなった。