【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「翠れ……翠玉、連絡、なかったよな?」
「ないよ」
名前を言い間違えそうになる兄は、灯蘭様のわがままで、特別に灯蘭様付の護衛となっているらしい。
本来なら、ダメなことなんだが……灯蘭様のそばから絶対に離れないという条件で、どうやら、護衛を継続中。
"灯蘭様の御身に何かあったらどうするんだ!”
……という、高官の方々の抗議については、黎祥の極寒の眼差しによって、粛清されたと嵐雪さんが言っていた。
朝廷の評価としては、利用価値の低い妹姫がどうなろうと気になさらないのだろうと囁かれており、そこにもまた、冷酷非道の若き王の名が付きまとうのだ。
(本当は、優しい人なのに)
因みに、黎祥と……皇帝陛下と翠蓮にただならぬ関係があったことは、兄達にも秘密である。
「蘇太貴妃は気位が高く、高慢であらせられますから。宦官にも平等に優しく、皇子公主にも親切で、しかも、順家の端くれってほどに名の通っていない翠玉様に見られるのは、大変な屈辱のようですよ」
面倒くさい、という雰囲気満々の嵐雪さんは、大きなため息。
「翠玉は薬師として、もう十分に有名だわ!そう言えば、最近の後宮の一連の事件の黒幕は順翠玉だなんて噂流したの、どうせ、蘇家でしょ!?本当、何なの?蘇家といい、周りの取り巻きといい……群れてないと、何も出来ないの!?貴族のそういう所が、私は嫌いだわ!!」
困ったように翠蓮が笑っていると、怒ってくれたのは灯蘭様。
既に知っていたことなので、というか、太医も優秀な方々なので、問題はないと思う。
毒の種類を知らずとも、太医ならば、手の尽くしようはあるだろう。
根本的から、この後宮で渦巻く毒問題を解決することは不可能としても。