【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「祐鳳が言うことは、間違ってないよ」
無言になった翠蓮を心配したのか、声をかけてくる慧秀兄様。
翠蓮は戸惑いを隠せないまま、
「いえ、そんなことより……祐鳳兄様、馬に乗れたんですね……」
と、正直に自分の気持ちを言うと。
「は!?そこ!?」
と、大きな声で。
「祐鳳、静かにしなさい。まだ、朝早いんだから」
「おっと」
自身の口を塞いだ祐鳳兄様は、
「あのな、武官になるって言っておいて、馬に乗れないとか笑い事じゃないから」
と、言ってきた。
そうは言われても、貧乏だった翠蓮の家で馬と触れ合う機会なんてなかったし、仕方ないではないか。
剣や弓の鍛錬はしていたことを知っているが、馬なんて……後宮に行くまで、本物は商人が来た時くらいしか、翠蓮は見たことがなかった。
「それで、灯蘭様の護衛になったの?」
「ん?」
「どうして、兄様が灯蘭様の護衛になっていたのか、気になって」
文官に色々と(三省六部など)あるように、武官にもある。