【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―あ、あの、兄様……」
つん、と、引っ張られる衣。
振り返ると、たどたどしく、黎祥を見上げている露珠がいて。
「なんだ?」
普通に尋ねたつもりだったんだが、ビクッと、体を強ばらせた露珠。
どうして、この兄妹でここまで引っ込み思案な子供が生まれてしまったのか……この国において、かなりの謎である。
先々帝の子息達は、自由と騒々しいことを好むはずなんだが……どうも、露珠は違う。
風流人の振りをして、騒ぐ流雲兄上の様ではなく、
どさくさに紛れて、人を弄り倒そうとする麗宝姉上の気も無く、ただ単に、人が苦手らしい妹。
黎祥は涙目になった、今年成人(本編内では十五歳)する露珠の目の前にしゃがみこんで、視線を合わせて、再度問う。
「―どうしたんだ?露珠」
すると、目を見開いた露珠は。
「こ、これを……陛下に渡してくれと……」
震える手で、差し出されたのは便箋。
毒でも盛られた手紙かと疑り深い気持ちで考えながら、それを受け取り、開くと。
「っ、……」
「―陛下?どうなされました?」
息が、詰まった。
嵐雪に声をかけられて、返事しようと思ってもできなくて。
「―あっ……」
手から、自然に手紙が落ちて。
それを拾って、嵐雪に渡してくれた露珠。
「ちょっと、目を通しますよ」
黎祥のあまりの反応に勘違いしたのか、紙に目を通した瞬間、呆然として。
「―何じゃ?」
笑いながら、鏡佳姉上たちの喧嘩を見ていた皇太后までよってきて、手紙に目を通す始末。