【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



彼の腕の中で、弱々しく笑う彩苑。


『皆、いなくなってしまったわ……』


笑う。


翠蓮の記憶の中でも、笑う彼ら。


『透翔(トウショウ)、閃賀(センガ)、雨露(ウロ)、佑帖(ウチョウ)……桜雪(オウセツ)……皆、ありがとう』


『彩苑!』


『叡綜……貴方を一人にすること、許してね……』


少し向こうには、重なり合うように死ぬ男女。


『ごめんね……貴方を、幸せにしてあげられなくて……』


『いいっ、そんなこと、もう、どうでもいいんだ!』


彩苑の瞳からは、涙が溢れて。


叡綜と呼ばれた青年は、声を張り上げて。


『彩苑っ!』


駆け寄ってきた、見目麗しき青年は涙を零して。


『ダメだっ、死ぬな!!』


『……』


『儂らを置いて、逝くな………っ』


傍らには、蒼覇の遺体。


『ごめん、ね……』


―嘆く青年は、翠蓮の知っている飛燕だった。


そうか。前に感じたあの感じは、この時の記憶か。


彩苑は完全に弱っていて、


『何も言うな。今は眠れ』


抱いてくれている彼のその言葉で、目を薄く開けて。


『彩苑』


名前を呼ばれて、言葉を発さず、ただ、柔らかく笑うことで返事を返した彩苑。


多くの人間が嘆くのに囲まれながら、静かに時は流れて。


…………あの時の声は、夢のあの声は、この声か。


その光景をぼんやりと見ながら、翠蓮は考えた。


すると、叡綜が彩苑に。


『最後に言わせてくれ』


『……』


『君が、好きだった。愛してた。君の戦友になれたこと、誇りに思う。君の婚約者でいられたこと、幸せに思う。―次の世では、今度こそ、蒼覇と幸せになれ。お前の横には、蒼覇がいなければならない』


嗚呼、気が遠くなる。


誰もが、嗚咽する。


冷たくなった旧神殿の中、叡綜は強く、彩苑の身体を抱きしめて―……。


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