【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―

「―退け」


紫京様の肩を掴み、後ろにやった祥星様は紫京様にお母様の身体を渡して。


「翆蘭、お前も下がっていろ」


その場にいる全員を守るように、立つ。


「殺してやる!殺してやる!!既に幾人も殺したんだ!!もう、躊躇うこともない!」


「……」


「死ねばいいのに!死ねばいいのに!!どうして、鳳雲様が殺された!?全ては―……貴様がっ、翆蘭っ、お前があの方を見捨てたからだ!!!」


血が滲むような、叫び声。


愛はいつしか歪み、信じたくなかった最期しか見えなくなっている。


周囲に視線を投げると、震えて泣く鈴華様を抱きしめている、明鈴がいた。


(―それでいい)


明鈴はまだ、やり直せる。


あなたはまだ、光の中にいる。


ここから出たら、会わせてあげよう。


お母様だと、明鈴を紹介しよう。


「お前のせいだ!お前のせいだ!お前がいたからっ、お前のせいで!!!」



その前に、目の前の彼女をどうにかしないとだけども。


一方的に、翆蘭様を責め立てる媽妃。


翆蘭様は何も言わず、ただ、彼女から離れた紫京様の傍に寄り添っている。


本当は誰よりも、その悲しみに苛まれている人なのに―……。


「死ね死ね死ね!みーんな、死んでしまえ!!あの人を殺した世界など、国などいらない!!」


―異常だ。


目を見開いて、大声で笑い、泣いている。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!現帝もっ、皇后も!みんな、みんな、死んでしまえ!!!」


―ただ、愛されたかったの。


色んな人に、色んな願いがある。


翠蓮が黎祥と違うように、お母様だって、白蓮お母様とは別人で。


自分の苦しみから逃れられず、戦うことを放棄してしまったら、きっと、その人は悲しみに飲み込まれてしまうだろう。


悲しみに飲み込まれて、何も見えなくなってしまったら、あとはそれを壊すしかなくなる。


それはきっと、生きている中で、一番苦しい。


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