その悪魔、制御不能につき



そっと後ろに下がった瞬間背中に何かが当たって、それを疑問に思う前に力強い腕に拘束された。それが誰か、なんて愚問で。


バクバクと心臓が嫌な音を立てる。なぜか今になって以前雑談で社長と都築さんが親戚であり昔から交流を持っていて、よく似た者同士だと言われているということを思い出した。


社長はともかくとして都築さんにはあれだけ最初からあからさまな警戒心を持っていたのに、なぜ社長には持たなかったのか。


性格的に合わない、それも理由だけど、それ以上に私は都築さんに感じる、こう…黒くて奥底にある目をつけられたら逃れなくなりそうなところが嫌だったのに。


社長と都築さんが似た者同士なら、社長にもそういう一面があってもおかしくないのに、私はその可能性に今気づいた。そしてさっきの社長と都築さんの言葉。


もしかして、わざと私に社長のそういうところを気づかせないようにしていた……?


ぎこちなく私を拘束しているだろう人を振り向きざまに見上げれば、いつも通りの無表情の、しかし見たこともないような目…つまりは捕食者のような目をした社長がいて。



「どうぞ、鷹斗。貴方の思うように」



こんな状況でなければ見惚れてしまうような笑顔を浮かべる都築さんに頭の中に警鐘が響く。同時にもう手遅れであることも理解して自分の危機管理能力を呪った。


私を映す瞳が都築さんの言葉を合図に獰猛な光を放つ。本能的な恐怖に声を上げる前に目が眩むほどの甘い香りと生々しい唇を塞ぐ感触を最後に私は意識を失った。



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