その悪魔、制御不能につき



扉の方に顔を向ければ逆光で細かな表情とかはよく見えないが見慣れたシルエットがあった。声の感じからして冷静ではあるけど怒ってそう。その怒りが私に向かないといいけれど。


コツコツと革靴の音が部屋に響く。無意識のうちに気圧されたのか私を引き倒した男たちは社長から遠ざかるように離れていった。…手足縛られてるから寝てるしかない私ってよく考えると間抜けよね。


顔が見えるぐらいに近づくとお世辞にも機嫌がいいとは言えない表情の社長がさらに不機嫌に傾いたのがわかった。いつもの無表情が歪んでるわよ。


そう軽口を叩こうと思ったもののすぐに柔らかくも強い力で抱きしめられて、力が抜けてしまった。自分の体が思っていた以上に強張っていたことに気づいて、結構精神的にもきていたみたい。


大人しく社長の腕の中に全体重を任せればさらに包まれるように抱きしめられた。馴染んだ香りにあぁ、と思う。いつの間にこんなに私は社長の全てに馴染んでいたのだろう。



「な、なぜ…?なぜ鷹斗さんがここに、」


「気安く俺の名を呼ぶな」



社長にしては珍しいぐらいに嫌悪を滲ませてそう吐き捨てるように言う様子に顔を上げて表情を見ようとしたけど、見られたくないのかぐっと胸に顔を押し付けられた。そこまでされると逆に見たくなるわ。というか息できないから。


社長の腕の中で身動ぐとまだ縛られたままの手首が痛んで思わず唸るような声が漏れる。それに気づいたのかすぐに取ってくれたのはありがたいんだけどそれよりさりげなく出してきたコンパクトなナイフが気になる。それ、普段から持ってるわけじゃないわよね…?



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