その悪魔、制御不能につき
「大丈夫か?」と心配そうに手首に残った擦り傷と痣、そして腫れて少し熱を持つ頰に触れる社長に大丈夫だと返してお礼を言ってから振り向いた。
「鷹斗さん、嘘よね?そんな後ろ盾も地位もないような庶民が鷹斗さんに相応しいわけないもの!あたしならっ、あたしならあなたに全部あげられる!あたしこそが鷹斗さんにふさわしいのよ?!!」
しばらく喚いても社長の目が彼女に向くことはなく、その闇色の瞳に映っているのは私だけ。いい加減うるさいし気づけばいいものを、この女はいつまで気づかないのかしら。
やがてヒステリックな声は私への罵倒に変わっていって私はともかくとしてそっちが雇った人たちまでドン引きしている。頭悪そうなのにどれだけの罵倒ボキャブラリーがあるのかとそっちの方が感心するわ。
怒り、憎悪、嫉妬…負の感情に歪んだ女の顔の醜さは目に余るわね。それほどまでに私が憎いのだろうか、目障りなのだろうか。そこにあるのは社長への感情じゃなくて自分をただ優位な場所に置きたいがゆえの自尊心だけなのに。
社長の外面だけ、良いところだけ、見えるところだけを都合のいいように解釈して、この人の異常とも言える思いすら受け止めきれなさそうな脆弱な人間のくせに。