その悪魔、制御不能につき



そこからはまぁ、事件のゴタゴタの後始末に襲われつつもいつから用意されていたのかわからない婚姻届に記入、即提出に追加して結婚式の予定とかもすでに詰められた。さすがに説得して少し落ち着いてからにはしたけど大変だったわね。


社長的にはまた逃げられるんじゃないかって急ぎたかったみたい。普段なら都築さんに協力求めるところを一人でテキパキやってたわ。そんなにされなくてももう逃げないんだけど…我ながら説得力はないわね。


そのことに対して社長という社会的身分があるくせに勝手に婚姻届を出したことと相談しなかったこと対して周囲からあれこれ言われ、主に社長が怒られていた。都築さんに。


確かに私もそれはどうかと思ったけど無表情ながらに浮かれているのがわかっていたので諦めた。私に社長を完全に制御する力はないのでこれからもそういう役は都築さんに丸投げする予定である。決して社長とここまで至るのに都築さんにあれこれ地味にされたことの仕返しではない。


そしてすぐに妊娠していることがわかり完全に私は社長から逃げられなくなった。もしかして、と聞いてみたら案の定わざと、というか社長に縛り付けるために孕ませたと悪気もなく言いやがったので鉄槌を下してやった。余談だけど妊娠がわかった時に社長の両親から都築さんにも逃すなというお言葉があったらしい。どんな包囲網だろうか。


またそこで一悶着あったけど、私は仕事を辞める気はさらさらない。子どもができようが何されようが自分が限界で無理だと思うまでは仕事を続ける。社長は辞めてほしい、というよりは家に閉じ込めたかったみたいだけど離婚するぞと脅しをかければ大人しくなった。本気を感じたらしい。都築さんには「さすが鷹斗の選んだ人ですねぇ」と笑われたけど褒め言葉として受け取っておいた。


それから慌ただしく結婚式を挙げたり哉瑪を出産したりとのんびりする暇もなくて大変だった。印象的だったのが社長のご両親に顔を合わせて開口一番に謝罪されたことってどうなんだろうか。


しかも「鷹斗は夫によく似ているから、会った瞬間にホテルに連れ込まれたりしなかった?でもごめんなさいね、本能で生きている子だから貴女を逃すともうお嫁さんにも孫にも会えないと思うの。諦めて頂戴ね?相談にはいつでも乗るから」と本当に心配そうながらおっとりと義母に言われてもしかして都築さんの言葉がなければそうなっていたかもしれないことと完全包囲網が張り巡らされていることに思わず遠い目になった。




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