その悪魔、制御不能につき



なぜ今さらになってそんなことを思い返しているかといえば、その原因は向かいに座っている自分とよく似た息子である。


自分でも思うが両親や他の親戚にも言われるように哉瑪は俺によく似ている。写真を撮ればどっちがどっちなのかわからないぐらいに瓜二つだ。


ただ輝夜の教育の賜物なだけあって俺よりも社会的な倫理観はしっかりしている…と思う。少なくとも外面的には。多分輝夜がいなかったら中身も俺みたいなのに育っていただろう、と輝夜が言っていたとこの間湊の前でぽろっとこぼしたら「さすが斉木さんですねぇ」と感心していた。どういう意味か。ただ、



「父さん、」


「なんだ」


「そろそろうーの全部貰ってもいいかな」



自分とよく似た顔が無表情のまま首を傾げる。その拍子に長めの前髪がさらりと横に揺れた。


哉瑪の言う全部とは、言葉の通り全部なのだろう。俺が輝夜を捕まえた時のように体も心も、法律的な意味でも社会的な立場でも。全てにおいて自分のものにする。


……輝夜の前ではおとなしい子だが俺の前ではたまにこういう似た部分を見せる。恐らくそれをわかっていて哉瑪はその部分を俺の前で見せるのだろう。



「哉瑪は今いくつだ?」


「15」


「相手は?」


「10」


「……まだ早くないか?」


「僕、絶賛思春期なんだけどね」





< 65 / 70 >

この作品をシェア

pagetop