あの時からずっと、君は俺の好きな人。
すると水野くんは驚いたように目を丸くした。


「え!? 吉崎さん家パン屋なの!?」

「え、う、うん」

「どこに店あるの!?」

「あー。学校から真っ直ぐの……海沿いのラーメン屋の向かいの。ネイビーマーメイドって店」

「マジかよ! すげー近いじゃん! 今度買いに行くわ!」

「あ、ありがとう」


水野くんが店に来たらなっちゃんが変なこと期待しそうで面倒だなあ。ーーまあいいか。


「あ、俺浩輝を待たせてんだ。もう行くね」

「うん」

「ここのおすすめと、パン屋のことありがとね。ーーあ、それと」

「何?」

「水泳大会の係、一緒に頑張ろ」


水野くんは爽やかに笑ってそう言うと、私が何かを言う前に踵を返して行ってしまった。

ーーあれが私と一緒係をやる水野くんか。

これはモテそうな人だ。そしてこんな風に気軽に話せるなら、確かに一緒に係はやりやすい気がする。

私はそんなに頑張る気はなくて、そつなくこなすだけになるから、それは申し訳ないが。

とりあえず、うまいことそれなりに仕事をして、彼の気分は害さないようにしようと思った。

とても素直そうな印象を受けた水野くんを、がっかりさせてしまうのは忍びない気がしたから。
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