あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「あ、吉崎さん。記録ノート見せて」

「うん」


言われてみんなのタイムを記録しているノートを水野くんに渡す。受け取るなり、彼はパラパラとめくって真剣に考え出した。


「みんなタイムいい感じに伸びてるな。まあ浩輝や坂下さんは初めから早かったけど」

「うん」

「でも、3年生はまだまだ早いだろうなあ。練習の時に見ても、気迫が違うよね」


水泳大会の練習は全クラス同じ時間に行うから、私たちが練習している隣のコースで3年生が泳いでいる場合がある。

水野くんの言う通り、のんびりなんとなく練習を行っている1,2年生と違って、3年生がいる方からは「フォームが悪い」だとか「中継ぎのタイミングが遅い」といった声が頻繁に聞こえてくるので、大会に対する真剣さがまったく違うことが分かる。

まあ、我が2年2組は2年生ながら、初日の練習の水野くんの鶴の一声おかげでわりと本気で練習しているが。

それでもうちのクラスの選手達は、みんな気のいい子達なので、ギスギスした雰囲気はまったく生まれてないけれど。
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